【時習26回3-7の会 0226】~「茨木のり子『自分の感受性くらい』」「週刊ダイヤモンド『検証!トヨタ最強伝説』」「2月25日:『飯田龍太』命日」
■今泉悟です。 皆さん如何お過ごしですか。 さぁ、今日も【2637の会】会報【0226】号をお送りします。
*
■さて、今日も【2637の会】関係のニュースがありませんので、前【0225】号でお約束した茨木のり子の著名な詩『自分の感受性くらい』をご紹介します。 茨木のり子の詩と言えば、前回の「わたしが一番きれいだったとき」が有名ですが、茨木氏の作品を良く知っている人によると、この「『自分の感受性くらい』のほうが好きだ」と言う声を耳にする。 そこで今日は、この作品を大岡信氏の【解説】(「現代詩の鑑賞101」より)と共にご紹介します。 では、どうぞ・・
*
自分の感受性くらい 茨木のり子
*
ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて
*
気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか
*
苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし
*
初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった
*
駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄
*
自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ
*
【解説】▼「自分の感受性くらい」は、同題の詩集(1977年)所収。 この詩も「……のせいにはするな」のフレーズが繰り返し現れ、「うた」の要素を強めている。
ここにはまことに小気味よく同時代の若者に向けて発せられたメッセージがある。 いやこれを聞いて身に覚えのある人は若者に限られまい。 本当にそうだ、私も思う。 私も、「初心消えかかるのを/時代のせいに」したくなりがちな者である。 茨木のり子に喝を入れられて、しかし不快に思う人はまずないだろう。 今日喝を入れて叱ってくれる人は滅多にいない。 「ばかものよ」。 ありがたくこの親愛感あふれる言葉を受けようではないか。
これは茨木の「対話」志向が直接的に現れている作品で、今日このような詩の書き手は少数派に属する。(中略)とくに若い人のあいだには少ない。 傷つくことを恐れ、他者に差し出す手、近づく一歩に戸惑うからである。 その人の生きる姿勢と詩は本来密接に結びついているものである。 詩は志でもある。(中略)
こういう姿勢は次に引くエッセイの断片からも読み取ることができるだろう。 どんなことでも、自分たちに関したことは、自分たちにも責任があるとする考え方である。 ここでは男性に対する女性の考え方を述べているのだが。
「何かにつけ男性対女性という敵対関係では捉えられず、女の問題は男の問題であり、男の問題は女の問題であるという、いわば表裏関係が私の中には形づくられているようなのだ。/たとえば戦争責任は女には一切関係ないとは到底思えず、日本が今尚ダメ国ならばその半分の責任は女にあるというふうに」(「はたちが敗戦」)
*
*
■ところで、ここで全く話題を変えます。 少し、「経済」の話を・・


最近の景気の大幅な悪化は、我々の日常生活にも暗い影を落としている。
去る2月16日、内閣府の発表によりますと、2008年10月~12月期の国内総生産(GDP(季節調整済)の速報値)が、実質で前期比3.3%減(年率換算12.7%減)と、大幅なマイナス成長となったという。 これは、第1次石油危機の影響を受けた1974年01~03月期(年率換算13.1%減)以来、実に約35年ぶりの低水準で戦後worst2位の記録となった。 同日付のYOMIURI ONLINEでは次の様に論評している。
*
◆外需に頼る日本経済の弱点直撃◆
つるべ落としのような景気の悪化が止まらない。10~12月期のGDPは実質、名目とも大幅なマイナス成長に陥った。これは日本のこれまでの景気回復が輸出に依存し続けてきた結果、世界経済が急減速するとその影響を大きく受けてしまうという「急所」をもろに突かれてしまったためだ。
(中略)
日本の輸出は米国ほか、欧州、中国向けも急減し、ほぼ全地域向けで減少(中略)。 輸出がGDPに占める割合は1996年度の10%から07年度には約18%に達しており、こうした経済構造の弱点が、世界不況で鮮明に表れた形だ。 10~12月期成長率の落ち込み幅が他の先進各国に比べてひときわ大きいことが、日本の深刻な状況を象徴している。
企業や家計は投資や消費を急速に萎縮させており、国民の不安心理は高まっている。景気がいつ底を打つのか先が見えない状況で企業の人員削減は今後本格化し、消費が一段と冷え込むのは必至だ。
*
【小生comment】
▼因みに、1974年01~03月期とは、第二次田中角栄内閣時代で、我々【2637の会】がまさに現役時代で、大学入試のあった時です。 小生、その当時は受験勉強の真っ只中で景気の落ち込みのことなど全く関心も、実感もなかったのですが、最近の景気の大幅な落ち込みについては、流石に立場上強い関心を持たざるを得ません。(笑)(汗)
読売新聞では、「緊急対策を打つべし」と警鐘を鳴らしていたが、日本の現内閣では心もとない。 米国のオバマ大統領の大統領就任演説とヒラリー・クリントン国務長官の日本での日米同盟重視の発言の出来栄えに比べ、わが国の某首相や、ろれつが回らない儘記者会見を行い辞任に追い込まれた某財務相の○○○○・・。 impactの大きい大規模経済対策を一刻も早く手を打たないと、日本経済は、米国以上の深刻なダメージを受ける懸念も決して小さくない。 その一端は、次の雑誌の経済特集記事からも推察できる。
*
その特集記事とは、先日発売された週刊ダイヤモンド2009/2/14号「検証!トヨタ最強伝説」のことである。 色々な視点から調査・分析してあり、なかなか面白いと思いましたので、その一部をご紹介させて頂きます。 詳細は当該雑誌を講読されることをお薦めします。(笑)
*
◆二期連続赤字の土壇場◆
今年度、トヨタは戦後初の営業利益赤字に転落する。(中略)過去最高をたたき出した2007年度からたった一年。 天国から地獄とはまさにこのこと(中略)。 しかも業績悪化の底がまだ見えない。(中略)
たった一年間で2兆7千億円近い利益がすっ飛んだ計算になる。(中略)減収要因は大きく二つある。「販売台数」と「円高」だ。
「販売台数」(中略)は、前期比177万台の減少(これだけでマツダ1社の販売台数を軽く上回る)。 トヨタの場合、一台当たりの限界利益はざっくり(いって)(中略)80万円(中略)。 すると、177万台で合計1兆4,200億円の利益減となる。
次に、「為替」の影響である。 トヨタの場合、一円の円高ドル安で400億円の減益要因とされる。 07年年比(中略)、最近では20円の円高。(中略)これだけで8,000億円、他国通貨の円高傾向も勘案すると、都合9,500億円の利益減となる。(中略)
一方で、トヨタ得意のコスト削減、原材料価格安による改善もあるが、こちらは僅かに700億円程度。 かくして4,000億円強の営業赤字となる。(中略)
02年以降、米国の自動車販売台数は1,600万~1,700万台規模の高水準を保った。
(中略)
トヨタも例外ではない。 米国好調を当て込んで、毎年工場を二つも三つも建設した。 生産能力は毎年60万~70万台ずつ増えた。(中略)(この規模は)富士重工1社分である。
それでも現地生産だけでは追いつかず、レクサス、プリウス等を対米輸出した。 07年の輸出台数は01年度に比べて約100万台も増えている。(中略)(ところが・・)
サブプライムショックで何もかもが弾けた。 不動産価格が下がり、住宅・自動車がパッタリ売れなくなった。 山高ければ谷深し、である。 2010年に1,800万台と言われていた米国市場は、今年1,000万台~1,100万台に迄落ち込みそうだ。
トヨタのドル箱である高級車、大型車はさらに厳しい。 昨年12月、(中略)レクサスは、(中略)前年同期比42%減となった。(中略)こうなると・・
トヨタの苦境は来年度も続く。(中略)販売台数が600万台前半に落ち込むか、為替が1ドル=80円に振れれば、1兆円規模の営業赤字となる恐れもある。
最大の焦点となる米国を例に(中略)みると・・、トヨタぼ米国シェアは約17%だから、需要予測を1,100万台とすれば販売台数は187万台。(中略)
加えて、カナダを含めた北米全体の工場生産能力は約200万台。 これまで日本から北米に輸出していた134万台(ピーク時)は殆ど不要となり、国内の過剰設備・人員が深刻化する。(中略)米国市場が復活しなければ、トヨタの黒字転換は有り得ないのだ。
*
◆トヨタを見れば日本がわかる◆
ものづくりは、正しく国を支える産業である。 GDPに占める製造業比率は21.5%。 その頂点に立つのがトヨタ自動車だ。
21世紀に入ってトヨタの業容は急拡大した。2008年3月期の売上高26兆2,892億円は01年3月期の約2倍。 経常利益2兆2,703億円は同3倍である。 (中略)
2000年3月期の北米売上高は約4兆5,000億円、08年3月期は約9兆2,000億円である。 10年足らずで実に二倍以上に増えた。(北米の伸びに比べ) 一方で、若者のクルマ離れもあり、(トヨタの日本)国内販売は177万1,700台から158万7,300台へと1割強も減少。(中略)(2008年迄、トヨタの国内生産台数は漸増傾向にあり)今なお国内が主力の様にも見えるが、これは対米を中心とした輸出によるものである。 こうした外需依存のトヨタの成長軌道は日本の製造業のそれともピタリと一致する。(以下略)
*
【筆者comment】
▼この週間ダイヤモンドの特集記事は、内容が盛り沢山で、全部は到底ご紹介できませんのでこの辺りで止めますが、要は、米国経済の急回復は今後1年はまず無理であるため、実質円安で外需依存型経済に安住していたトヨタを頂点とする日本の製造業界は、これから先も厳しい状況が続くであろう(これは自動車産業に限らない)、と警告している。
一方、オバマ米大統領は、バブル崩壊後の日本の二の舞にはならないと、不退転の覚悟で経済復興に注力しつつあるので、米国経済は比較的早期回復も期待される。 その半面、問題は日本だ。 2008年第3四半期の実質GDPが年率換算12.7%の減少は、米国経済悪化の影響を一番大きく被ったのは我が国日本であることを証明したことになる。 今こそ政府が、実効性のある経済対策を早急かつ真剣に打って行かねばならない筈なのに、今のところ有効な具体策が打ち出されていない。 「我が国は、危急存亡の際に立たされている」として救国の真のリーダーが登場して、有効な対策を一刻も早く具現化して欲しいものである。
*
【後記】■さて今日の締め括りは、2月25日が命日に当たる飯田龍太の名句をご紹介してお別れします。
*
白梅のあと紅梅の深空(みそら)あり 飯田龍太
*
【解説】昭和48年作。『山の木』(昭和50年)所収。(中略)この句で、目の前に咲いているのは紅梅であり、白梅はもう終わっているのだが、読者の目には時間差のあるその両方の花が見える。 紅梅ははっきりと、白梅は気配として、一句の中に咲き誇っているのである。(中略)この句の場合は「深空」(中略)を共通項として、白梅と紅梅の間にある時間差を、一句は同時に取り込んでいる。(正木ゆう子『現代秀句』より)
*
紺絣(こんがすり)春月(しゅんげつ)重く出(いで)しかな 飯田龍太
*
【解説】昭和26年春、食糧事情も一応安定したので、農耕を止め、甲府にある県の図書館に勤めることにした。 バスの終点から三十分ほど歩いて坂道を帰る。 大菩薩峠のある秩父山系と、富士山麓に抜ける御坂山系のほぼ中ほどの山の上に、橙(だいだい)色の春の満月がぬっと現われて、ひえびえとした空にポッカリと頭を出す。 名残り惜し気に山を離れるとやがて潔く中天に昇った。
春の月の色は厭らしい、という人があるが、山国の澄んだ夕景色の、特に早春の姿はまんざらでもない。 清潔な色気がある。 あるいは母の乳房の重みといってもいい。したがって幼時を思い出す。
子供の頃は、専ら久留米絣を着た。 兄から順にお下がりを着せられた。 着古すとだんだん絣の模様がハッキリ浮かび出てくる。 年毎に柄模様の小さなのに昇格した。 模様の大小によって、兄弟の貫禄に差をつけたのだろう。
昭和26年3月作/『百戸の谿』(「飯田龍太自選自解句集」より)
*
【筆者comment】
▼山本健吉氏が著『定本 現代俳句』の「紺絣・・」中で、「龍太氏の好きな早春の季節である」と紹介している様に、「白梅のあと・・」も、また以前ご紹介した「春の鳶寄りわかれては高みつつ」も、春を題材にした秀句である。 短い十七文字の中に、夫々「白梅、紅梅、深空」、「紺絣、春月、重く出し」、「春の鳶、寄りわかれ、高みつつ」と、色彩や動作・質量感が読者にハッキリとした存在感として伝わって来る。 imageが頭に確り残る俳句が飯田龍太氏の真骨頂だ、と思う。
*
では、また・・。(了)















最近のコメント