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2016年10月22日 (土)

【時習26回3-7の会 0623】~「松尾芭蕉『野ざらし紀行』〔第3回〕」「10月08日:大垣市スイトピアセンター Art Gallery『姫路市立美術館所蔵/ポール・デルヴォ―版画展〔彷徨える夢を求めて/幻想のVenus達〕』&大垣市守屋多々志美術館『芭蕉―同行二人―』展を見て」「佐藤愛子『人間の煩悩』を読んで」

■皆さん、お変わりありませんか? 今泉悟です。
 今日も《会報》【0623】号をお送りします。

■さて今日は、前回&前々回《会報》に引き続き、松尾芭蕉(1644-94)の第一作目となる紀行文『野ざらし紀行』〔第3回〕をお届けする。
 今日もまず復習を兼ねて『野ざらし紀行』の行程を以下に再掲する。

※ 1684(貞享元)年 ※
【済】八月中旬(十一~廿日(新暦1684年9月20~29日頃))‥・江戸深川の草庵を門人千里(ちり(=苗村氏))を伴い、東海道を上方を目指して出立。
【済】八月二十日過ぎ(新暦09月30日過ぎ)‥・小夜中山を越える
【済】八月晦日(新暦10月08日(猶、八月は小の月につき晦日は29日)‥・伊瀬外宮を参詣
【済】九月八日(新暦10月16日)‥・伊賀上野着、兄半左衛門宅に滞在
 ‥・千里の故郷、大和国竹内村千里宅を訪問、吉野山に登る
◆九月下旬(新暦10月28日~11月06日)‥・今須・山中を経て大垣へ‥谷木因亭に泊す
 十月初旬~中旬(新暦11月07日~25日頃)‥・伊勢の多度権現、桑名本統寺を経て熱田へ
 十月下旬(新暦11月25日頃~12月06日)‥・名古屋へ赴く、その後再び熱田へ
 十二月廿五に(新暦1685年01月29日)‥・伊賀上野に帰り越年

※ 1685(貞享02)年 ※
 二月(初旬から中旬廿日迄(新暦03月05日~03月24日)) 伊賀より奈良へ、二月堂の行事を配す
 因みに、東大寺二月堂の修ニ会(しゅにえ(=おみずとり))は二月一日~十五日(現在は、新暦03月01~14日に行われる)
 二月下旬(廿一日~晦日(新暦03月25日~04月03日)) 京都鳴滝の三井秋風の山荘に遊ぶ
 三月上旬(朔日~十日(新暦04月04日~13日) 伏見西岸寺に任口上人を訪ねる
 三月中旬(十一日~廿日(新暦04月14日~23日)) 水口の駅で服部土芳に逢い数日滞在、のち名古屋へ向かい熱田の桐葉亭へ
 四月四日(新暦05月06日) 鳴海の下郷知足を訪ねる
 四月五日(新暦05月07日) 熱田へ戻る
 四月九日(新暦05月11日) 再び鳴海へ赴く
 四月十日(新暦05月12日) 鳴海を発ち、江戸へ向かう
 四月下旬(廿一日~晦日(新暦05月23日~06月01日)) 木曾・甲斐を経て江戸へ帰着

《原文》
 やまとより山城を経て、近江路に入て美濃に至る。
 います・山中(注1)を過(すぎ)て、いにしへの常盤(注2)の塚有(あり)。
 伊勢の守武(注3)が伝(いひ)ける、「よし朝殿に似たる秋風(注4)」とは、いづれの所か似たりけん。
 我も又、

  義朝の心に似たり秋の風

 不破(注5)

  秋風や藪も畠も不破の関

《現代語訳》
 大和から山城を経て近江路に入って美濃に着いた。
 今須・山中を経て、昔の常盤御前の塚がある。
 室町時代の連歌師 伊勢守武が詠んだ「よし朝殿に似たる秋風」と、どの辺りが似ているのだろうか。
 私も又‥

【意】保元の乱では父為義や弟為朝達と戦い、平治の乱では敗れ、部下に殺された義朝‥
   この秋風は、義朝の無念の死を思えば、一層寂しさを強く感じさせるものだ
【季語】秋の風:秋

 不破

【意】鈴鹿・愛発(あらち)と共に三関の一つである「不破」の関所は今は既にその姿はなく、藪にも畠にも秋風が吹き荒(すさ)んでいるヨ
【季語】秋風
【解説】人住まぬ不破の関屋の板廂(びさし)荒れにし後はただ秋の風
   【意】今は廃止され人住まぬ不破関の小屋の板廂よ
      荒れ果てた扉(=板で葺いた廂の着いた扉)に、むなしく秋風が吹いている
      〔藤原良経(1169-1206)/新古今集/巻17/雑歌中〕を踏まえる

(注1)います・山中:「今須」は中仙道の宿場町で不破の関の西隣にある
   滋賀との境界近くにある/山中はその東にある/今須と山中はいずれも現・岐阜県不破郡関ヶ原町にある
(注2)常盤:源義朝の愛妾常盤御前/絶世の美女の誉れ高かった/源義経の母
(注3)伊勢の守武:荒木田守武(1473~1549)/室町時代の連歌師/伊勢神宮神官荒木田守秀の九男
   山崎宗鑑に連歌を学び、宗鑑と共に俳諧の祖
(注4)よし朝殿に似たる秋風:荒木田守武の『守武千句』に「月見てやときはの里へかかるらん・よしとも殿ににたる秋風」とある
(注5)不破:関ケ原町にある不破の関跡
   伊勢の「鈴鹿の関」、越前の「愛発(あらち)の関」とともに設置された「三関」の一つ
   673年天武天皇によって都(飛鳥浄御原宮)防衛の為、鈴鹿・愛発(→のち逢坂に変わる)と共に設置された

《原文》
 大垣(注1)に泊りける夜は、木因(注2)が家をあるじとす。
 武蔵野を出る時、野ざらしを心におもひて旅立ければ、

  しにもせぬ旅寝の果よ秋の暮

《現代語訳》
 大垣に泊まった夜は、谷木因の家に世話になった。
 武蔵野を出発した時、野ざらしになっても構わないと「死」を覚悟しての旅立ちだったので、

【意】どうにか死ぬことはなく、生きたまま旅寝を重ねてきた
   お陰様で、此処大垣で確りと宿をとっていられる秋の暮れだ
【季語】秋の暮:秋

《語句》
(注1)大垣:岐阜県大垣市/『おくのほそ道』の結びの地でもある
(注2)木因:谷木因(1646-1725)/大垣の船問屋/通称は九太夫
   木因と芭蕉は、年も2歳違いと近く、共に北村季吟門下として交流があった
   又、芭蕉の他に、井原西鶴や大淀三千風とも交流があった

【小生comment】
 谷木因(1646-1725)との親密な交流もあって、芭蕉の大垣滞在はほぼ一月に及ぶ
 こうした大垣との縁が、後の『奥の細道』の「むすびの地」に繋がったのだろうか‥。

■続いての話題は、10月08日に大垣市スイトピアセンター Art Gallery『ポールデルヴォ―版画』展&大垣市守屋多々志美術館『芭蕉―同行 二人―』展を見て来たのでその模様についてお伝えする。
【ポールデルヴォ―(1897.09.23-1994.07.20)版画展】
 デルヴォーの本格的な版画集は、今回初めて見た。
 以下に展示作品の中から幾つかの作品をご紹介する。

[01]大垣市スイトピアセンター Art Gallery入口と本展案内
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[02]本展leaflet
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[03]Paul Delvaux『夢想するアンヌ』1966年
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[04]同『よそ行きのdress』1967年
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[05]同『窓』1971年
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[06]同『静寂』1972年
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[07]同『ささやき』1981年
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[08]同『庭』1971年
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[09]同『パイオリーブ』1975年
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【小生comment】
 本展は、姫路市立美術館所蔵のポール・デルヴォ―の版画展である。
 彼の絵には、女性への羨望というか、美しさとeroticismが併存していて、見る者〔‥と言っても多分男性が殆どだろうが‥〕を魅惑する魔性が潜んでいる。

 さて、大垣市スイトピアセンター Art Galleryを後にして、大垣市守屋多々志美術館へ向かった。

【大垣市守屋多々志美術館『芭蕉―同行 二人―』展】
 本展は、大垣市に生まれた日本画家、守屋多々志の作品のうち、松尾芭蕉の作品と生涯に焦点を当てた『芭蕉‥同行 二人‥』展と、守屋が描いた故郷、大垣の街『ふるさとの家』展という企画ものを同時に開催した展覧会である。

[10] 大垣市守屋多々志美術館入口
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[11]本展leaflet
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[12]同『加賀の千代女』
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《守屋の生家大垣市船町界隈を描いた『ふるさとの家』》
[13]同『ふるさとの家〔朝餉〕』(左)・『ふるさとの家〔午睡〕』(右)
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[14]同『ふるさとの家〔残照〕』(左)・『ふるさとの家〔宵宮〕』(右)
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【小生comment】
 芭蕉が生きた昔日の心象風景を眼前にしていたら、虚実に関係なく、日本人としての郷愁がふつふつと胸に湧いて感動して居る自分に気付いた。
 守屋多々志の歴史物の作品は、見る者に日本人としてのidentityとnostalgiaを与えてくれる。

■続いては、最近読んだ本、佐藤愛子『人間の煩悩』についてご紹介する。
 佐藤愛子(1923.09.23- )氏のessayは、機知に富んでいて面白い。
 其処で、本書から幾つかをご紹介する。

【第二章/人生とは】から‥順風満帆な人生なんてない〔P.64〕‥
 多くの人は「順風満帆」を何よりの幸せだと思っている。
 躓(つまず)きのない、順調平穏な人生に憧れる。
 しかしこの世にはそんな人生なんてないのだ。
 蹉跌があってこそ生きることに意味があるのだ。
                 『死ぬための生き方』

【第二章/人生とは】‥失敗なくして強さは身につかず〔P.65〕‥
 私は失敗をしては戦い、その戦いに拠って力を培ってきた。
 今は何がきても怖くなくなった。
 覚悟を決めて生きられる様になったのは、数々の失敗のお蔭だと言える。
 用心深い人には負け惜しみに聞こえるだろうが、そう言えば私の人生は痩せ我慢の人生だったと言えよう。
                 『戦いやまず日は西に』

【第三章/男と女とは】‥「十の情事より一つの恋よ」〔P.92〕‥
 「中根さん、苦しい恋の経験はどんなに辛くてもね、経験しないよりはした方がいいのよ、十の情事より一つの恋よ」
                 『風の行方(下)』

【第三章/男と女とは】‥健全な男はみな助平である〔P.93〕‥
 格言―男ってヤツは女がひっつきまわれば、例えどの様なご面相であろうとも、必ずヤル。
 それが健全な男である。
                 『ひとりぼっちの鳩ポッポ』

【第六章/長寿とは】‥生きるのも大変だが、死ぬのも大変〔P.180〕‥
 全く、生きるのも大変だが、死ぬのも大変という事態になって来た。
 これというのも医学の目覚ましい進歩のお蔭である。
 その力で人は長寿になり、長寿は認知症を招き、認知症は病でなく老い衰えた為の脳細胞の欠落に拠る症状であるから治療法というものがなく、死とは関係ない。
 それでも身内は放って置く訳にはいかないから、看護に心身をすり減らす。
 長寿は目出度くなくなったのである。
                 『かくて老兵は消えてゆく』

【第六章/長寿とは】‥人生最後の修行の時〔P.196〕‥
 これからの老人は老いの孤独に耐え、肉体の衰えや病の苦痛に耐え、死にたくても中々死なせてくれない現代医学にも耐え、人に迷惑をかけていることの情けなさ、申し訳なさにも耐え、その総てを恨まず悲しまず受け入れる心構えを作って置かなければならないのである。
 どういう事態になろうとも悪あがきせず死を迎えることが出来る様に、これからが人生最後の修行の時である。
 如何に上手に枯れて、有りの儘に運命を受け入れるか。
 楽しい老後など追求している暇は私にはない。
                 『老い力』

[15]佐藤愛子『人間の煩悩』
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【小生comment】
 本書は、上記に紹介した第二・第三・第六章の他は、「第一章/人間とは」「第四章/子供とは」「第五章/あの世とは」がある。
 何れも面白いので、興味ある方は、是非本書を手に取ってご覧頂きたい。
 きっといい気分転換になると思料する。
 因みに、詩人のサトウハチロー(1903-73)は佐藤愛子氏の異母兄である。

【後記】最近、めっきり夜が長くなった。
 「読書の秋」という言葉が浮かび、久保田万太郎の次の名句が浮かんだ。

  敢えて思ふ 燈火親しむべきの候 久保田万太郎(1889-1963)

 続けて、この名句に触発されて次の様な拙句が浮かんだ‥

  燈火親しみ乍ら君(きみ) 想ひけり 悟空
 
 お粗末さまでした。

 ではまた‥。(了)

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